◎神経症、心身症と精神病
【精神病】
・精神病とは、統合失調症と双極性感情障害(躁うつ病)の精神障害を伴う身体疾患を言い、原因には、内因、外因、心因があり、これらが複数重なって発症することもあります。
●[内因性精神病]
・原因は明確には解明されていないが、脳自体に要因があるとされ、先天的な脆弱性のあるところに環境的な要因が加わって発症するとされています。
○統合失調症:発症する原因が明確に解明されていないのが現状だが、遺伝的な要素や脳内の神経伝達物質の過剰仮説、環境因子、心理学的因子、大脳の構造的異常などの多くの原因が絡み合って脳の機能に障害が起こり、働きが阻害され発症すると考えられていて、思考、知覚、自我意識、意志・欲望、感情など、多彩な精神機能の障害が見られます。
・一般に破瓜型(思春期前半に発症することが多く、 解体した思考や行動(まとまりのない思考や行動)が主体)に比べて妄想型(妄想や幻覚が症状の中心で解体した言動が乏しい)は発症年齢が遅いとされ、30-40代での発病が多く、男性と比較して女性は平均発症年齢が遅く、閉経後にも小さな発症のピークがある。
・統合失調症は、放置すると次第に悪化して、社会的な機能に障害を残す欠陥状態と呼ばれる状態になるので、本人に病識がなくても専門医による治療が必要です。
○双極性感情障害(躁うつ病)は、躁状態とうつ状態を繰り返す精神疾患で、一旦回復しても、完治することはなく再発することが多いので、生涯にわたる薬物投与による予防が必要となります。
・双極性障害は、躁状態を伴う双極I型障害と、軽躁状態を伴う双極II型障害に区分され、双極I型障害は、1回の躁状態で終わる症例は稀であり、うつ状態と躁状態のいずれかが、症状のない回復期を伴いつつ、繰り返していくことが多く、躁状態から次の躁状態までの間隔は数カ月単位という場合から、うつ状態と躁状態が混ざって存在する混合病相が生じる場合もあります。
・うつ状態と軽躁状態のみが認められる場合のことを言うが、軽躁状態そのものが、患者や家族には認識されていないことも多く、自覚的には反復性のうつ病と考えている患者も多くいます。
・躁状態は、気分の異常な高揚が続く状態で、躁状態の初期には、明るく開放的であることもあるが、症状が悪化するとイライラして怒りっぽくなる 場合も多く、本人の自覚的には、エネルギーに満ち快いものである場合が多いが、社会的には、種々のトラブルを引き起こすことが多く、社会活動や人間関係に著しい障害を生じます。
・軽躁状態は、基本的に躁状態と同じ症状であるが、社会的、職業的機能や人間関係に影響のない程度のものを言います。
・うつ状態は、抑うつ気分や不安・焦燥、精神活動の低下、食欲低下、不眠症などを特徴とし、以前まで楽しめていたことにも楽しみを見いだせず、感情が麻痺した状態になり、食欲、体重、睡眠、身体的活動性の4つの領域で、顕著な減少または増加が生じます。
●[外因性精神病]
・外因性精神病は、原因が非心因性に認められる精神病で、器質精神病、症状精神病、中毒精神病の3分類がされています。
○器質精神病:中枢神経細胞自体の障害によるものです。
アルツハイマー病、パーキンソン病、脳血管障害、日本脳炎、ヤコブ病、多発性硬化症、正常圧水頭症など。
○症状精神病
感染などの脳以外の身体疾患によって現れるものです。
○中毒精神病
アルコール、麻薬、覚醒剤、大麻などの物質に誘発されるもの。
●[心因性精神病]
・心の葛藤やストレスなどの心的要因によって起こった精神の強い反応で、遺伝的な要素は殆ど関係がなく、友人や身内の死や事故、災害の体験など、環境の急激な変化や強いショックを受けることで精神に異常が来すもので思考の障害は伴いません。
・症状に応じて急性一過性精神病性障害(統合失調症症状を伴わない急性多形性精神病性障害や急性統合失調症様精神病性障害)や感応性妄想性障害(妄想を主とする急性精神病性障害)などに含まれるもので、一ヶ月以内に症状が治まる場合は短期精神病性障害と言われます。