精神疾患の特徴

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◎精神疾患の特徴

●自律神経失調症の特徴
・自律神経失調症は、交感神経と副交感神経の2つから成り立つ自律神経のバランスが崩れた時に、様々な不調が体に起こるもので、日本心身医学会では「種々の自律神経系の不定愁訴を有し、しかも臨床検査では器質的病変が認められず、かつ顕著な精神障害のないもの」と暫定的に定義されています。

・自律神経は血管、リンパ腺、内臓など、自分の意思とは無関係に働く組織に分布する神経系のことで、呼吸や代謝、消化、循環など自分の意思とは無関係で生命活動の維持やその調節を行い、絶えず活動している神経です。

・原因としては、交感神経は代謝、消化などの生命活動を活発にする働きをし、副交感神経は交感神経とは全く逆の働きをし、人間の体では凡そ12時間交代でこの二つの 神経の優位が入れ替わるとされているが、夜更かしやストレスなどで脳を休める時間が減ると自律神経が興奮し、結果的に交感神経と副交感神経の優位入れ替わ りのバランスが崩れ、自律神経失調症となるとされています。

・症状としては、様々な症状があり、目眩い、冷や汗、体の一部が震える、緊張するようなところではないのに脈が速くなる、血圧が激しく上下、立ち眩み、耳鳴り、吐き気、頭痛、微熱、過呼吸、生理不順といった身体症状から、人間不信、情緒不安定、不安感やイライラ、抑うつ気分など精神的な症状が現れることも多く、症状は多岐に渡ります。

・治療法としては、薬物療法や睡眠の周期を整える行動療法などの心理療法が行われるが、マッサージやカウンセリングなどが有効な場合もあり、また、自律訓練法を用いて心因的ストレスを軽減させ、症状を改善させる方法もあるが、治療は心身の両面から柔軟に行うことが必要とされます。


●抑うつ神経症の特徴
・抑うつ神経症は、悲哀、抑うつ、制止などのうつ状態を主症状とする神経症の一つで、うつ病ほど症状は重くないものの、慢性的に軽度のうつ状態が長く続くことを言い、現在は気分障害の中の気分変調性障害に分類されています。

・原因としては、近親者の死、親しい人との別離や転居、転職などの対象喪失が誘因(遺伝的な素質や性格、ストレスなどが原因)となることが多く、特に幼少期に大切な人との別離や喪失を体験している人に多い傾向があります。

・症状としては、悲哀感、落ち込み、焦り、不安、不眠などが特徴的なものだが、うつ病と異なる部分は、気分の日内変動がみられない、人格障害を伴う、不安や焦燥感が強い、環境の変化に反応して症状が動揺しやすい、抗うつ薬など薬物療法が効きにくい、などにより概念的にうつ病とは区別されています。

・治療法としては、基本的には抗うつ薬と抗不安薬などによる薬物療法や心理療法(精神分析的精神療法や森田療法、内観療法など)により行うが、場合によっては、薬物療法と心理療法を併用することが効果的だが、専門医のいる医療機関で治療を進めることが重要です。


●躁うつ病の特徴
・躁うつ病(双極性感情障害)は、内因性の精神疾患であり、気分障害の一つで、躁状態を伴う双極I型障害と、軽躁状態を伴う双極II型障害に区分されます。

[双極I型障害]
・1回の躁状態で終わる症例は稀であり、うつ状態と躁状態のいずれかが、症状のない回復期を伴いつつ、繰り返していくことが多く、躁状態から次の躁状態までの間隔は数カ月単位という場合から、うつ状態と躁状態が混ざって存在する混合病相が生じる場合もあります。

[双極II型障害]
・うつ状態と軽躁状態のみが認められる場合のことを言うが、軽躁状態そのものが、患者や家族には認識されていないことも多く、自覚的には反復性のうつ病と考えている患者も多くいます。
・I型の躁は、気分が高揚し、自尊心の肥大、観念の奔逸、多弁で多幸感もあり、不眠不休で行動したりする反面、些細なことで激怒したり、誇大妄想したり、注意力が散漫になったり、幻覚や幻聴などが現れても、気分が高揚しているので、病識(病気だという意識)がありません。
・II型の躁は、社会的や職業的機能に影響のない躁(軽躁)で、不眠状態でも平気で、気分は陽気で、周りとも活発に交流し、一見何も問題ないように見えるが、激しく怒ったり妄想が出ないだけで、実際は苛々が募っていたり、疲れが溜っていて無理をしています。

・うつ状態は、精神症状として、抑うつ気分や興味・喜びを喪失、無価値感が顕著になり、集中力、思考力、決断力の低下が起こり、抑うつ気分に日内変動(朝方は激しく、夕方になると軽くなる)がみられ、身体的症状として、食欲、体重、睡眠、身体的活動性の4つの領域で、顕著な減少または増加が生じます。

・治療法としては、躁とうつの変動を抑制するための気分安定薬を中心とした薬物療法が主体となるが、必ず専門医や専門職のいる医療機関で治療を進めること。再発の兆候をモニターするなどの再発予防のために疾患教育や、ストレス管理のためや社会復帰に向けてのカウンセリングも重要です。


●統合失調症の特徴
・統合失調症は、発症する原因が明確に解明されていないのが現状だが、遺伝的な要素や脳内の神経伝達物質の過剰仮説、環境因子、心理学的因子、大脳の構造的異常などの多くの原因が絡み合って脳の機能に障害が起こり、働きが阻害され発症すると考えられていて、思考、知覚、自我意識、意志・欲望、感情など、多彩な精神機能の障害が見られます。

・生真面目で正直な人や純粋で小心な心優しい人などが罹病しやすく、思春期から青年期(15~24歳)に発症することが多く、小児期の発症や老年期での発症もみられ、男性と比較して女性は平均発症年齢(25~34歳)が遅く、閉経後にも小さな発症のピークがあります。

・主な症状としては、陽性症状と陰性症状の二つに分けられ、陽性症状の場合には、知覚の障害(幻覚・幻聴、幻視など)や、思考過程の障害と思考内容の障害(妄想)、自我意識の障害などが特徴的なものとして挙げられます。
・陰性症状の場合は、感情の障害や思考の障害、意志や欲望の障害など、感情が乏しくなる、意味もなく笑う、世間に対して無関心になる、引きこもって無為に過ごすなどの症状が表れ、自閉傾向が強くなります。

・治療法としては、外来治療と入院治療に分けられ、薬物療法を主体として他の治療法も病相の時期(急性期、慢性期など)に応じて適宜選択される。いずれにせよ、専門医に受診、相談し、必ず専門医や専門職のいる医療機関で治療を進めることです。
必要に応じて、作業療法や生活技能訓練、集団精神療法などが行われ、支援者として、精神保健福祉士、作業療法士、臨床心理士などが専門職としてサポートします。


●強迫性障害の特徴
・強迫性障害(強迫神経症)は、強迫症状と呼ばれる症状に特徴付けられる精神障害の一つで、強迫観念(本人の意志と無関係に頭に浮かぶ、不快感や不安感を生じさせる観念)と強迫行為(不快な存在である強迫観念を打ち消したり、振り払うための行為)からなる不安障害です。

・発症に至る完全な原因は判っていないが、共通点として、元来几帳面であったり、融通が効かずに生真面目な性格傾向が挙げられる事が多くみられる。

・強迫症状には、不潔強迫、加害恐怖、被害恐怖、縁起強迫、数唱強迫、確認強迫、高所恐怖など、この他にも些細であったり、気にしても仕方の無い事柄を自他共に認める状態にあっても、これに囚われ(強迫観念)、その苦痛を避けるために生活に支障が出るほど過度に確認や詮索を行う(強迫行為)という、これらのことは軽度な部分では、日々の生活において誰しも経験していることです。

・治療法としては、基本的には抗うつ薬などによる薬物療法や心理療法(行動療法や認知行動療法、森田療法など)により行うが、薬物療法と心理療法を併用することが効果的だが、専門医や専門職のいる医療機関で治療を進めることが重要となります。


●不安神経症の特徴
・不安神経症には、大きく分けて全般性不安障害に分類される慢性の不安(予期不安=対象のない怖れ)とパニック障害に分類される急性の不安(不安発作)の2つのパターンがあるが、どちらも精神障害の一つの不安障害です。(パニック障害については次項で述べるので、この項は全般性不安障害について述べます。)

・発症に至る完全な原因は判っていないが、神経質で不安を持ちやすい性格の人に多い傾向があり、何らかの精神的なショック、心配ごと、悩み、ストレスなどの精神的原因と思われることもあるが、まったくないこともあり、過労、睡眠不足などの身体的原因が引き金になることもあります。

・症状としては、過敏、緊張、落ち着かない、イライラする、集中困難などの精神的症状と、筋肉の緊張、頭痛、震え、動悸、息苦しさ、目眩、下痢、不眠(寝つきが悪い、途中で目が覚める)などの多様な身体的症状(不定愁訴)があります。
何かにつけて過度の不安や心配(予期不安)が付きまとい、それが慢性的に続くのが特徴で、不安に伴ういろいろな精神的、身体的症状が現れます。

・治療法としては、全般性不安障害には、パニック障害のような決まった薬はなく、抗不安薬などによる薬物療法と心理療法(行動療法や内観療法、森田療法など)が行われるが、専門医や専門職のいる医療機関で治療を進めることが重要となります。

●パニック障害の特徴
・パニック障害は、不安発作(パニック発作)といわれる、予測のできない急性の強い不安の発作を繰り返す症状を特徴とする精神障害の一つの不安障害です。

・発症に至る完全な原因は判っていないが、何らかのストレスが原因となり、自律神経のバランスが崩れ、神経伝達物質の変化(過敏や過活動、あるいは機能不全)によって引き起こされるものと考えられていて、乳酸、炭酸ガス、カフェインなどに過敏で発作が誘発されやすく、過労、睡眠不足、風邪などの身体的な悪条件や、日常生活上のストレスなど、非特異的な要因も、発症や発作の誘因になるとされています。

・症状としては、危険でないのに、動悸、心悸亢進、心拍数の増加、発汗、窒息感、胸痛、胸部不快感、嘔気、腹部の不快感、目眩、異常感覚(感覚麻痺)、死ぬことに対する恐怖など、予測のできない強い恐怖や不快を感じるが比較的短時間で治まります。
パニック発作自体は、生命身体に危険を及ぼすものではないが、発作を繰り返し慢性化すると予期不安や、長期化すると広場恐怖(一人で外出できなくなったり、引きこもりがちになる)が生じます。

・治療法としては、パニック障害は、発作の不可解さと、発作に対する不安感によって悪化していく疾患であり、医師が明確に症状について説明し、心理教育を行うことがすべての治療の基礎となります。
抗うつ薬や抗不安薬などによる薬物療法と心理療法(認知行動療法や内観療法、森田療法など)が行われるが、専門医や専門職のいる医療機関で治療を進めることが重要となります。

●摂食障害の特徴
・摂食障害(中枢性摂食異常症)は、主として先進国(痩せていることが美しいとする文化的な背景のある地域)の思春期や青年期の女性に多く(男性は5%程度)発症する、神経性無食欲症(拒食症)と神経性大食症(過食症)に大きく分類(他に、睡眠関連摂食障害や特定不能の摂食障害がある)される、精神疾患の一つで依存症の一種で、どちらも体重に対するボディイメージが障害され、自分を評価するときに体型や体重を過度に重視する点が特徴です。

・原因としては、人間関係の問題による心理的なストレスや不適応、コミュニケーションの不全などとされているが、間脳視床下部食欲中枢に障害が起きているという説もあり、拒食症の場合には両親から多大な干渉を受けているために自立性に欠けていると感じ、拒食という行為によって個性や自立性を得ようとしているもので、過食症は、自立することに強い不安を感じ、愛情を求めるために摂食という母性的な行為に固執していると考えられていて、遺伝子の研究や脳画像解析の研究を含め、世界的に様々な視点から解明が試みられています。

・症状として、拒食症の場合は、極端な食物制限、思考力の低下、生理不順、過活動など、過食症の場合は、無茶喰い、自己誘発嘔吐、下剤乱用などの他、抑うつ症状、自傷行為、アルコール乱用などの精神症状を合併することも多く、内科的疾患(電解質代謝異常による不整脈、栄養失調による感染症や貧血、脳萎縮、骨粗鬆症など)を併発することがあります。

・治療法としては、拒食と過食は 周期的に繰り返される場合が多く、食行動異常が注目されやすいが、その背景にある心の問題を解決しないと摂食障害は完治しないこともあるので、解決するには精神分析的心理療法と薬物療法とを併用し、極度の低体重の場合には入院治療により栄養面への対処を最優先します。
基本的には、なぜ摂食障害になったのかの成り立ちを理解し、専門医の診断と専門職の心理的なカウンセリングを受けることが有効です。

●トラウマの特徴
・トラウマ(心的外傷)とは、外的内的要因による衝撃的な肉体的、精神的ショックを受けた事で、長い間心の傷となってしまうことを指し、外傷体験とも言われ、典型的な心的外傷の原因は、幼児虐待や児童虐待を含む虐待、レイプ、戦争、犯罪や事故、いじめ、暴力を含む悲惨な出来事、実の親によるDV、大規模な自然災害などです。

・トラウマを引き起こす出来事は、単に切っ掛けに過ぎず、事件や事故などといった何らかの出来事があってから数か月も数年も経過しているにも関わらず、その記憶を思い出し、回避(自ら孤立を選択)、麻痺(無痛覚)、摂食障害(無食欲、大食)、解離(内的な逃避)、恐怖反応(パニック発作)などの苦しみ続ける状態を作り出し、成人であっても幼児還り現象が見られる事もあり、これは保護を求めるSOS信号として発せられます。
軽度の場合はヒステリー状態が短発的に継続発生するのが平均的な症状で、治療せずに罹患者を放置した場合、自傷行動を含む危険行為を行う場合もあります。

・トラウマを治療するには、時間の経過を待つのではなく、トラウマ体験を過去の事として終わらせる必要があり、受けた傷の圧力を軽減させるためには、心の中に秘めるのではなく、その体験に向き合い、その事について話す事が、体験を過去の事として終わらせる為の重要なことでもあり、後遺症を深刻化させないための重要な対策にもなるので、専門的な知識を持った専門職や医師の心理療法を受けることが有効であるが、気分の深刻な落ち込み、入眠困難、中途覚醒などの症状によっては薬物療法も必要になります。

●PTSDの特徴
・心的外傷後ストレス障害(PTSD)とは、心に加えられた衝撃的な傷が元となり、後になって様々なストレス障害を引き起こす疾患のことです。
PTSDと診断するための基本的症状が1ヶ月以上持続している場合にはPTSD、1ヶ月未満の場合にはASD(急性ストレス障害)と診断されます。

[基本的症状]
(1)回避:トラウマの原因になった障害、関連する事物に対しての回避傾向。
原因となった外傷的な体験を思い出すような状況や場面を、意識的あるいは無意識的に避け続けるという症状と感情や感覚などの反応性の麻痺という症状を指します。
(2)過覚醒:精神的不安定による不安、不眠などの過覚醒症状。
交感神経系の亢進状態が続いていることで、不眠やイライラなどが症状として見られます。
(3)再体験:事故や事件、犯罪の目撃体験等の一部や、全体に関わる再体験(フラッシュバック)。

原因となった外傷的な体験が、意図しないのに繰り返し思い出されたり、夢に登場したりします。
・強い衝撃を受けると、精神機能はショック状態に陥り、パニックを起こす場合がある。その機能の一部を麻痺させることで一時的に現状に適応させようとするが、そのため、事件前後の記憶の想起の回避や忘却する傾向、幸福感の喪失、感情鈍麻、物事に対する興味や関心の減退、建設的な未来像の喪失、身体性障害、身体運動性障害などが見られ、特に被虐待児には感情の麻痺などの症状が多く見られます。

・PTSDを治療するには、時間の経過を待つのではなく、トラウマ体験を過去の事として終わらせる必要があり、受けた傷の圧力を軽減させるためには、心の中に秘めるのではなく、その体験に向き合い、その事について話す事が、体験を過去の事として終わらせる為の重要なことでもあり、後遺症を深刻化させないための重要な対策にもなるので、専門的な知識を持った専門職や医師の心理療法を受けることが有効であるが、気分の深刻な落ち込み、入眠困難、中途覚醒などの症状によっては薬物療法も必要になります。

・PTSDの回復とは、事件を繰り返し整理し、異常な状況や事件を思い出すことによる無力感や生々しい苦痛に襲われなくなる状況や、それに強く影響されず、最低限の生活ができるようになった状況を指し、治療としては、PTSD発症のきっかけとなった事件後の心と身体、生活の変化を自覚し、元に戻す作業が行われます。
・PTSDを治療するには、通常、薬物療法と心理療法の双方が用いられる。心理的外傷となる出来事への情緒的な反応を解決するには、薬物療法など併用しながらの、ナラティブセラピーが最も有効だと考えられているが、近年ではEMDRも効果的な治療方法として注目を集めています。



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